AI-OCR連携自動化で請求書仕訳クラウドサービスを支える「Waha! Transformer」|鈴与株式会社 様・アライズイノベーション株式会社 様
紙文書のデジタル化に欠かせないAI-OCRによって業務の効率化を実現
物流会社の鈴与株式会社では、輸出入に関わる通関業務で行うInvoiceやPacking Listなどの紙書類のデータ化作業の効率化においてAI-OCRを導入しています。そして、読み込んだデータを有効活用するためのデータ変換、加工処理に向けて「Waha! Transformer」を採用、同社が外販するソリューションにも組み込まれています。
導入メリット
通関業務や請求書入力など大量の紙を受領する業務にAI-OCRとETLオプションとして提供されている「Waha! Transformer」を適用。これにより業務工数の削減や読み取り精度向上を実現し、さらに外販に向けた環境整備を可能にした。
目次
課題
大量の紙を扱う業務で、AI-OCRの活用機運が高まる
1801年創業という長い歴史を持つ物流企業として、現場力・解決力・展開力の3つの強みを活かした事業を展開している鈴与株式会社。静岡県静岡市にある清水港を基盤として、海上における貨物の取扱いを行う回漕業にて創業、現在は港湾荷役やDC・倉庫事業、運輸事業、国際物流、リース事業、文書情報管理などのデータソリューション事業、メディカルロジスティクス事業などさまざまな事業を展開。静岡を中心とした地域に根差した企業ながら、グローバルなビジネス展開を行っています。経営の拠り所である「共生(ともいき)」の精神のもとデジタルトランスフォーメーションを推進、「サービスクオリティで日本一の物流会社」「働きやすさと働き甲斐でも日本一の物流会社」を目指しています。
そんな同社では、倉庫内にて書類を預かる保管サービスなどを長年展開しており、その一環として保管された紙文書のスキャニングやデータ入力、抹消処理まで含めた、文書情報管理のソリューションを提供しています。「お客さまのなかには数百万件にもおよぶ契約書をお預かりするケースもあり、多くの書類を取り扱うなかで情報を入力する業務も少なくありません。そのため、以前からOCRについて社内で研究を進めており、一部の業務では利用してきました」と説明するのはデータソリューション事業部 部長 原 健二氏です。
データソリューション事業部
部長
原 健二氏
近年OCRに関しては、深層学習を駆使したAI-OCRソリューションが登場しており、同社としてもAI-OCRを業務に生かせる仕組みづくりに挑戦する機運が社内に高まっていました。そんな折、FAXで届くInvoiceやPacking Listに関する情報を税関システムに入力する業務を行っている通関事業の部門から、効率的に入力できる仕組みに対する要望が持ち上がったとデータソリューション事業 データソリューション営業課 課長 岡本 大氏は当時を振り返ります。「Invoiceは明細が詳細で、多いものだと1件の申告で100行を超えるものがあり、さらにタイミングによっては複数件送られてきます。法則性はあるもののフォーマットは定まっておらず、情報が記載されている場所も微妙に異なっているという事情もあり、これまでのOCRでは単純なデータ化が実現困難であったため、この領域でAI-OCRが活用できないか検討することになったのです」。
解決策
読み取り後のデータ処理が可能な「Waha! Transformer」があったからこそ採用できた
新たな仕組みづくりでは、非定型の書類に対してきちんと必要な情報が判別できるもの、そして精度が向上できるような仕組みが実装可能かどうかを念頭に、複数のソリューションを検討しました。「帳票フォーマットごとにAIの学習モデルが作成可能でも、ブラックボックス化された仕組みでは、どう改善すればいいのか判断できません。読み取り精度の改善に向けて、われわれでもブラッシュアップしていける仕組みを希望したのです」と原氏。また、社内で運用実績を積んだ仕組みを外販していく文化が根付いている同社だけに、将来的に外販できるかどうかも含め、ソリューションを選定していくことに。
データソリューション事業部
データソリューション営業課 課長
岡本 大氏
そこで注目したのが、非定型の帳票をキーワードで情報が読み取れ、またユーザ自身で学習ができる、アライズイノベーションが提供するAI-OCRソリューション「AIRead」でした。そして、OCR処理後のデータ加工や変換、システム連携に活用できるオプション「AIRead ETL Option」を持っている点にも注目したのです。「Invoiceの場合、品名や単価、数量、小計などが1行にそろっておらず、OCRで読み取った後に自力で加工する運用は現実的ではありません。相談してみたところ、ETLオプションによってデータを加工し、複数行を一行に結合するなど扱いやすい形にデータを加工できることが分かりました。そこで初めて、オプションの元となっているETLの『Waha! Transformer』を知ったのです」と岡本氏。
多くのベンダーが採用する座標での文字抽出では、明細の行数が可変するInvoiceでは対応が難しいなか、「AIRead」はキーワードをベースに情報を読み取ることが可能です。また、文字を学習させるためのモジュールが提供されているため、自社で精度改善していける点を高く評価したのです。「AI-OCR技術はわれわれに適したものでしたが、そもそもETLオプションとしての『Waha! Transformer』がなければ、読み取り後のデータ加工作業が別途必要でした」と岡本氏。
結果として、同社におけるAI-OCRの基盤とともに、取得したデータの加工や変換処理、そして周辺システムへの連携を実現するための「AIRead ETL Option」である「Waha! Transformer」を採用したのです。
導入効果
高機能のAI-OCR適用で現場の業務改善に貢献、DX推進を加速する重要なツールに
当初は通関業務にAI-OCRを導入し、なんと98.5%という衝撃的な読み取り精度を実現し、多いときで1つの申告で100行ほどの入力が必要なInvoiceでは、入力業務だけで3分の1ほどの工数削減を実現。その結果、AI-OCRの有効性がグループ内に広がり、多くの相談が寄せられることに。そこで現在は、グループ会社のなかで業務負荷の高い請求書の仕訳処理にもAI-OCRを適用している状況です。「請求書については定型化されているケースが多いものの、書いている情報をそのままデータにするだけでなく、その情報がどの仕訳に該当するのかを判断できる仕組みが求められました。そこで読み取った情報をもとにどの勘定科目に該当するのかを判断し、『Waha! Transformer』にて勘定科目に関する情報を付加して後段の処理を行っています」と原氏。他にも、荷主からFAXで届く出荷指示書や船荷証券の入力処理においてもAI-OCRを活用し、データ抽出後の加工処理などに「Waha! Transformer」が使われています。
通関業務においては、紙に記載されたInvoiceやPacking Listからキーワードによって明細情報を「AIRead」で抽出し、税関の仕組みに登録できる形に「Waha! Transformer」にて加工処理を実施しています。また請求書に関しては、「AIRead」で座標から情報を抽出し、「Waha! Transformer」にて勘定科目に振り分けながら会計システムに投入するための情報作成を行っています。会計システムへの登録前には人手で確認できる環境が用意され、システムがレコメンドした情報を人手にて修正し、その結果をフォードバックして学習させるプロセスです。「請求書では、複数明細行で入力に時間がかかっている帳票に焦点を当てています。キーワードでも座標でも抽出できる柔軟性は『AIRead』が持つ魅力の1つ」と岡本氏は評価します。
今回取り組んだAI-OCRは、現在経営層が掲げる聖域なきデジタル化に向けた取り組みの1つとして位置づけられています。DX推進を強力に進めることで、荷主を含めた顧客に対してデジタルの力で貢献していくことに大きく役立っていると原氏は評価します。「デジタルへシフトしていくことは、お客さまへの貢献だけでなく、現場で働くメンバーに対しても柔軟な働き方が提供できます。働き手の確保が難しい今の状況下でも、われわれと一緒に働きたいと思ってもらえる施策としても役立つはず。デジタルシフトは社内外に向けて大きな意味がある考え方であり、今回の取り組みはその一翼を担っています」。なお、今回のプロジェクトによって、OCRに懐疑的だった現場の認識をがらりと変えることにつながり、今では業務に欠かすことのできないソリューションとして重宝していると現場からも評価の声が寄せられています。
今回取り組んだAI-OCRによる請求書処理については、今では「請求書仕訳支援クラウド」として外販し始めており、すでに複数社での導入作業が進行中です。「仕訳含めた入力作業とともに、入力内容の正しさをチェックする作業の双方が省力化できるサービスです。属人化しやすかった仕訳処理が標準化できるだけでなく、ETLによるマスターとの突合処理などで入力情報の精度を高めることが可能です。また、FAX受け取り後に原本が郵送されることで二重請求などが発生しがちですが、ETLを駆使して見落としや誤入力の防止などに貢献でき、大きな工数削減を期待して採用いただけています」とビジネス面での効果も高いと岡本氏は評価します。
アライズイノベーション
代表取締役社長 CEO
清水 真氏
「Waha! Transformer」については、データフローとロジックが視覚的に把握しやすく、実際の開発担当者から“プラモデルを作る感覚に近い”と使い勝手の良さを表現しています。「OCRで誤読したものに対して文字を置き換えるような加工処理も『Waha! Transformer』が実施しています。読み取り精度向上にも役立っていると現場からも好評です」と岡本氏。また、「Waha! Transformer」をAIReadのオプションとしてOEM販売しているアライズイノベーション株式会社 代表取締役社長 CEO 清水 真氏は「ETLはオープンソースなども検討しましたが、日本語で記載されたツールでの使いやすいさとユニリタの充実したサポートを高く評価し、『Waha! Transformer』を選択しています。UI含めて直感的に使いやすいツールで、われわれにとっても手離れがいいのは大きな魅力です」と評価します。
今後の展開
外販に向けた環境整備とともに、チェック業務などへの提供も検討
今後については、外販できるクラウドサービスとして「請求書仕訳支援クラウド」の環境が整った段階となっており、拡販活動を積極的に展開していきたいと意気込みを語ります。「お客さまの環境に応じた機能開発を進めながら、『Waha! Transformer』を活用してお客さまの課題解決につなげていきたい」と原氏。もちろん、請求書に限らずグループ内で数多くニーズが出ており、新たなアイデアも取り入れながら適用業務の幅を広げていきたいと語ります。「グループ内では食品を扱う企業もあり、FAXで多く寄せられている発注書への適用を検討しています。また対象書類の拡大だけでなく、チェックも含めてデータ化した後の処理をさらに効率化していくなど、新たな付加価値も提示しながら広げていきたい」と期待を寄せています。
昨今では請求書をはじめとした紙の書類をデータで受領するケースが増えており、受領したデータの展開についても課題が残っています。「受領したデータが100%正しいわけではないため、データの正当性をチェックするという業務の重要性はさらに高まっていくはずです。チェック業務は非常に重要であり、このチェック機能だけを切り出して使いたいというお客さまも多い。紙がなくっていくなかで、チェック機能に焦点を当てたサービスの形も模索していきたい。その場合は、特にETLの部分が重要になってくるはず」と岡本氏。「Waha! Transformer」が担うETL機能単体での提供も含め、グループ内はもちろん顧客のDX支援に向けた環境をさらに強化していきたいと今後について語っていただきました。
「紙書類・SaaS社外情報活躍へ!データ化・自動化の進め方 ~ AI-OCR × RPA × ETLセミナー ~」もご参考ください。
鈴与株式会社
- 事業内容 :港湾運送事業、海上運送事業、内航海運事業 他
- 創業 :1801年
- 従業員数 :1,185人(2021年9月1日現在)
- URL :https://www.suzuyo.co.jp/
アライズイノベーション株式会社
- 事業内容 :AI OCR、ローコード・ノーコード開発ツール、RPAの提供
- 営業開始 :2016年7月1日
- URL :https://ariseinnovation.co.jp/
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