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MA:マーケティングオートメーションやSFA・CRMの導入失敗をリカバリーするKSFはLTV

 
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突然ですが、一つ質問です。

皆さんが金融機関・クレジットカード会社のマーケティング責任者だと仮定した場合、自社の取引不可リストに掲載されている個人・法人に対して、自社の広告を見てもらいたいでしょうか?
あるいは、営業アプローチをしたいでしょうか?

こんなことを聞くこと自体が品性に欠けるとお叱りを受けそうな問いではありますが、でも実際にはその意に反して広告は露出されているはずですし、場合によっては営業電話がかかってくることも少なからずあるはずです。

なぜなら、マーケティングもセールスも完全な形で個人や法人を特定し、アプローチを“オートメーション”できる時代にはなっていないのですから。

地上波のCMをはじめとするマス4媒体(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)はもちろんのこと、デジタルマーケティング分野でも DMP:Data Management Platform や CDP:Customer Data Platform といったツールを使って、パーソナライズされたターゲティング広告を配信しようという動きはありますが、Google が Chromeブラウザでサードパーティー Cookie のサポートを廃止する方向と表明したことで、実現が困難であることには変わりがないようです。

取引不可リストの話しはちょっと極端な例示になってしまいましたが、MAやSFA、最近であればRPAのように“オートメーション”と名の付くITプロダクトは「魔法の杖」ではなく、過度な期待を持つことによる失敗を避けていただく意味で、ツールの導入やリプレースを検討される際の前提としてください。

今回のトピックでは、MA:Marketing Automation や SFA:Sales Force Automation、CRM:Customer Relationship Management といったITプロダクトを導入したものの、販売生産性や顧客満足の向上に役立っていない/失敗している組織が、成功事例にリカバリーしていく方法について考察します。

一点、本トピックでは筆者が当事者としての経験を有するB2B:法人営業分野(産業財・情報財)をベースとしますので、B2C:消費財分野に携わっている方は一部読み替えていただくとお役に立てるかと思います。

アプローチとしては、B2B・B2Cを問わず「マーケティング近視眼」な部分最適に陥ることなく、MA・SFA・CRMを串刺しにしてゴールにたどり着けるようなリカバリー策を考えてまいります。

MA:マーケティングオートメーションやSFA・CRMの導入失敗をリカバリーするKSFはLTV
MA:マーケティングオートメーションやSFA・CRMの導入失敗をリカバリーするKSFはLTV

~目次~

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おさらい:全体最適に基づいた個別最適はあっても、部分最適やサイロは許されない

先のトピックで「CIOのミッション」について考察した際に取り上げた、某グローバル製造業における統治機構図を抜粋して再掲します。

まずはじめに、MA・SFA・CRMの失敗に共通するであろう要因として、それぞれのツールが部分最適やサイロになっているか否かは、この統治機構図における「マーケティング担当役員:CMO」の立場になって、マーケティング戦略に有用な情報がMA・SFA・CRMツールから得られるかどうか、見つめ直してみられることをお勧めします。

某グローバル製造業の統治機構図(抜粋版)
某グローバル製造業の統治機構図(抜粋版)

もちろん、この統治機構図をそのままコピペしたような組織に皆さんが所属しているとは限りません。
むしろ、「自らの組織では“顧客”と向き合う責任者は部門ごとにバラバラで統合されてない。」といったケースの方が多い印象もありますので、その場合は部門単位に置き換えてみられるとよいでしょう。

B2Cの場合、その任務は製品・サービスごとのプロダクト・マネージャーが担っていることが多いかと思います。
一方、B2Bの場合、マーケティングと称される機能の実態は広告宣伝:アドバタイジングや販売促進:セールスプロモーションに限定されていることが多く、組織によっては営業企画や営業推進と名付けられる中で、営業:セールスやカスタマーサポートとの間にセクショナリズムの壁が立ちはだかっていることも少なくありません。

しかしながら、かの有名なピーター・F・ドラッカー先生は「顧客創造」、セオドア・レビット先生は「顧客中心経営」としてマーケティングという概念を位置付けられていますから、マーケティング方針としては「顧客中心」という全体最適で捉えることに異論はないでしょう。※くれぐれも「顧客第一」でない点はご注意ください。

あくまでも、「部分最適やサイロの集合体なら失敗して当たり前」という例えですから、本トピックを読み進める間だけでもレビット先生が注意喚起された「マーケティング近視眼」を振り落としてみてください。

順調に伸びを見せるMA:マーケティングオートメーションの市場規模

安心してください。失敗しているのはあなたの組織だけではありません。

失敗仲間がどれぐらいいるか(ダークサイドに注意しながら)客観的に俯瞰する意味で、株式会社矢野経済研究所が公開しているプレスリリースからMAの数値を抜粋してご紹介します。

株式会社矢野経済研究所「DMP/MA市場に関する調査(2019年)」

リンク先のプレスリリースによると、MAについては日本市場での認知が高まったことで中堅・中小企業へと市場のすそ野が拡がっていくことにより、2018→2021で市場規模はほぼ倍増との予測になっているようです。

もう一つ、本サイトで定番のGoogleトレンドを見てみましょう。

Google トレンド「マーケティングオートメーション|SFA|CRM」の比較(2004年1月~)

テキストリンクもしくはグラフの隅にあるロゴマークをクリックするとGoogleトレンドのサイトにジャンプできますので、キーワードを取捨選択するなど深掘りしてみてください。

“MA”というキーワードだと有名なアパレル製品が含まれてしまうことから“マーケティングオートメーション”とカタカナにしているので、“MA”という略語が認知・浸透している最近はダウントレンドに見えますが、アメリカ発のMAツールが日本市場に進出しはじめた2010年代中盤が起点になっているところは確かなようです。

いずれにしても、市場規模の予測通りにMAツールの導入数が増えていくのなら、「屍の山」も比例して増えていくことになりかねません。
本トピックを何とか見つけていただいて、失敗が繰り返されることがないよう心の底から祈っております。

顧客インサイトを知らずして、マーケティングやセリングに疲弊するなかれ

MAツールやSFA・CRMの導入・運用を推進されている方々ならご存知の「顧客インサイト(Customer Insights)」。
ツールの名前と同様に概念の話しなのでその解釈も千差万別ですが、本トピックでは“顧客自身が気付いていない潜在ニーズ”を略語にしたという解釈で進めていきます。

皆さんの組織では、この「顧客インサイト」をどのようにして定義付け、運用しているでしょうか?

私が複数の組織で見聞きしてきた範囲では、営業戦略を策定・更新するタイミングで定義される「3C・STP・4P」の中にうっすらと隠れていたり、マーケティング関連のごく少数のメンバーを集めて「ペルソナ」や「CJM:カスタマージャーニーマップ」を作成する際に、ブレストを行う中で暗示的に登場する程度ではないでしょうか。

例えるなら、会社案内などで「顧客第一」と公言されている組織の内部でも滅多に耳にすることのない“隠された概念”という印象があります。

その理由はきっと明らかで、「顧客インサイト」は“誰の目にも見えない”からなのでしょう。

顧客インサイトを知らずして、マーケティングやセリングに疲弊するなかれ
顧客インサイトを知らずして、マーケティングやセリングに疲弊するなかれ

でも、これが「イノベーション」の文脈になるとちょくちょく登場するのが興味深いところです。
意地悪な見方をすれば、「多くのビジネスエグゼクティブは、イノベーションには興味があるけどマーケティングはやる気がない。」となるのでしょうか。

そこにもう一つ「顧客の声:VOC(Voice of Customer)」が加われば、SFA・CRMツール導入時の稟議書に記載されていたであろうバズワードの揃い踏みという様相ですが、お金を払いさえすれば導入してくれるITベンダーに丸投げしていただけという状況ではリカバリーが難しいのでスコープ外としておきます。

いずれにしても、MA・SFA・CRMに共通するのは
・前述したマーケティング担当役員:CMOのように「顧客に向き合うこと」であり、
・その実践方法として「顧客とのコミュニケーション履歴の蓄積」にツールを利用し、
・いかにしてそこから「顧客インサイト」を見出すか、
・さらに「発見した顧客インサイトを横展開」して販売生産性の向上に寄与させるのか、
ツール導入時にこれらがきちんと考慮されていた組織であれば、少なくとも“失敗”という状態には陥っていないであろうことが想像できますので、一つの目安としていただけるのではないでしょうか。

目に見えない「顧客インサイト」を形にして見せてくれるもの

MA・SFA・CRMツールの運用方針がきちんと定義されていたとしても、問題は「顧客インサイト」が目に見えないところにあります。

一つの方策として、これはかつてSFAの導入に携わった頃にクライアントと編み出した方法をご紹介します。

その骨子は、SFAから得られる情報として「失注(敗因)分析」をきちんと行うということでした。

クライアントは起業間もないベンチャー企業だったのでまだ既存客は数えるほどしかなく、それこそ統計的に有意と言える“量”の観点でも自社製品を拡販するために必要な「顧客インサイト」を明らかにするためのデータが不足していました。

一方で、日々繰り広げられる営業活動の中には、有人対応で製品・サービス説明など行ったにもかかわらず「失注(敗戦)」フラグの立った案件が着実に蓄積されていきます。

その中から、特に機能面で却下となったクライアントには担当営業とは別のスタッフが「営業対応アンケート」として電話ヒアリングをかけ、“実際に欲しかった機能”や“その結果選ばれた他社サービス”について、情報を付け加えて記録しておく運用を定義づけたのです。

製造業やコールセンターでよく知られる QA:Quality Assurance/品質保証活動 を、提案のクォリティーや満足度よりもインサイトリサーチに重みを置いて実施したわけですね。

失注(敗因)分析から導き出す顧客インサイト
失注(敗因)分析から導き出す顧客インサイト

MA・SFA・CRMツールを一気通貫して成功に導く共通指標はLTV

前述のマーケティング担当役員:CMOのKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)は売上でも粗利でもなく、データベースマーケティングの文脈で語られることの多いLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)だそうです。

売上・粗利にコミットメントするのは当たり前、さらに客数と顧客一人あたり利益まで含めたLTVという高度な次元で「顧客中心経営」を企業文化に落とし込んでいるんですね。

具体的には、先のトピックでも考察した「BIツール」で表示される経営ダッシュボードの中の重要な位置をLTVのグラフが占めているであろうことは容易に想像できます。

もしこの某グローバル製造業がMAやSFA・CRMを使っているのなら、それぞれのトップ画面やダッシュボードにもLTVが表示され、各ツールがデータソースとなっている部分を、深掘りしていけるようになっているのではないでしょうか。

顧客中心経営を具現化する3CとLTVの関係
顧客中心経営を具現化する3CとLTVの関係

一般的な企業であれば、商品(製品・サービス)が占めるであろう位置が「LTV」に置き換わっていることがお分かりいただけると思います。

一方、MA・SFA・CRMの失敗例となってしまっている組織では、それぞれのツールや分断されたプロセスごとに部分最適されたダッシュボードのまま、MA:コンバージョン数やSFA:受注数、CRM:問い合わせ対応件数のように、LTVというKGIから見ればはるか彼方にある中間指標がドカンと表示されていたりしないでしょうか。

また、MAからSFAに渡されるセールスリードに対しては、受け取る側の営業担当から「確度が低い」「質が悪い」といった不満が表明されることが少なくないと思います。
そんな時に、「LTV:パターンB」といったラベルがそのリードに付いていれば、既存の優良顧客とのコミュニケーション履歴に基づいているという明確かつ組織内の誰もが反論できない根拠が存在していますので、営業担当はその時のケースやコミュニケーション履歴をベストプラクティスとして見返すことができ、商談成功の確度を高めていく武器が持てることにもなるでしょう。

その結果、「好きか嫌いか」といった主観で判断されがちなセールスリードに客観的な裏付けが持てるようになることで、営業担当のモチベーション減退による機会損失も防止できるようになるのです。

実は、そんなLTVの考え方自体は日本の老舗にあった大福帳や宿帳というデータベースマーケティングの仕組みが手本になっているとも言われています。

その最たる例が「オ・モ・テ・ナ・シ」であり、主人:ホストと客人:ゲストの対等な関係が思い浮かんでくるところでもあります。

これは現代でも、百貨店の外商部門やグローバルラグジュアリーブランドにも受け継がれているものですし、日本で「GAFA」(Google・Amazon・Facebook・Apple)と称される先進企業に至っては、顧客一人ひとりのクリックやタップという極めて微細なアクションが基礎データとなって集計されているはずです。

なぜ、成熟市場のレッドオーシャンで苦しむ日本企業の間でLTVのような考え方が一般化していないのか、過去の私は不思議でならなかったところでもあります。

最近であれば、「サブスクリプション」という手段がバズワード化していますが、肝心な「LTV」については提供者側のキーワードという理由もあってか比較的にゆるやかな右肩上がりになっています。

Google トレンド 「LTV|サブスク」の比較(2004年1月~)

「LTV総選挙」や「L-1グランプリ」こそ組織が一体になれる最高のお祭り

それぞれのツールのダッシュボードに表示されるLTVは、例えるなら「LTV総選挙」や「L-1グランプリ」の結果であり、ドリルダウンするとその中にはネ申セブンやファイナリストといった「理想的な顧客像」が現れてくるはずです。
それはもしかすると、ドラマなどに登場する「嫌なお客」と見せかけた優良顧客かもしれませんので、表面的な印象論ではなく、根拠に基づいたデータドリブン経営を浸透させていくきっかけになるかもしれません。

特に、MAやSFAといったツールを使って販売生産性を向上させる場合、LTVランキングの上位にいる「理想的な顧客」とのコミュニケーションを再現していくことがベースになるはずでしょうから、組織内に埋もれているベストプラクティスを表出化させる意味でも、LTVを共通指標として共有することの価値は大いにあると言えます。

さらに、そのように満足度や継続率の高い顧客を担当していたスタッフも表出化されるはずですから、こんなに楽しくて組織内の誰もが注目し、モチベーションを持てる合理的な指標はLTV以外にない、LTVこそがMA・SFA・CRMの導入失敗をリカバリーするKSF:Key Success Factor(重要成功要因)と考える所以でもあります。

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Waha! Transformer の利用者像から見えた!データ活用・分析人材の視野と視座

Webメディアのビジネス+IT主催「データ活用・分析 2022 冬」で講演したプレゼンテーション・スライドです。
マーケティング部門をはじめとするビジネス人材向けのカンファレンスにつき、内容についてはツールよりもデータ分析に取り組む人材や、データドリブン経営を推進するための組織・風土について、Waha! Transformer をご利用いただいているお客様から学んだことを中心に紹介しています。

LTVの集計・更新に欠かせないデータ連携基盤

このように魅力的な経営指標であるLTVですが、実はどのような計算式を用いるかについては定まったものがありません。

LTV:顧客生涯価値という言葉からすれば、顧客一人ひとりがもたらしてくれた価値=利益の累計ということは共通かと思いますが、その利益は“粗利”とするのが最も簡単で、販売管理システムの商品マスターに売上原価が入力されていれば今すぐ運用スタートできるはずです。

売上とLTVの比較
売上とLTVの比較

ところが、MA・SFA・CRMのデータから得られるはずの顧客獲得・維持コストのように、原価に含まれない販売費・一般管理費を財務会計システムから配分するには相応のロジックと共に手間を要します。

MAがハンドリングする顧客獲得のキャンペーンについては広告宣伝費や販売促進費から配分することでまかなえそうですが、キャンペーン運営や営業・カスタマーサポートに要する人件費については、管理会計におけるプロジェクト会計や稼働集計といった仕組みがないことには、経営の実態を表す指標としてのLTVを導き出すことはできません。

そこで必要になってくるのが、MA・SFA・CRMに加えて基幹系システムのデータも集計できるデータ連携基盤です。

先のトピック「CIOのミッション考察」に掲載したイメージ図に、LTVの集計対象をマークして再掲します。

LTVの集計・更新に欠かせないデータ連携基盤
LTVの集計・更新に欠かせないデータ連携基盤

MA・SFA・CRMはSaaSやクラウドサービスを利用されていることが多いでしょうから、APIによるデータ連携はある程度まかなえるはずです。
一方、LTV算出で重要な「顧客獲得・維持コスト」の大事なところは人件費ですから、MA・SFAではキャンペーンコード、CRMでは顧客コードをキーにして、稼働管理するデータベースやスケジューラーツールと連動できることが、理想的な状態と言えるでしょう。

冒頭でご紹介したSFA導入をお手伝いしたベンチャー企業の場合は、勤怠管理システムの一機能として稼働集計ツールを全社標準で運用していました。

営業スタッフは顧客折衝に専念できるよう、会議や資料作成、移動時間などもすべてスケジューラーだけで分類・集計できるようにしつつ、経理や人事のような内勤スタッフも、どの部署のどんなテーマで稼働したのかいつでも分析できるようにしていたのです。

投資家に支えられ赤字からスタートするテクノロジーベンチャーでしたから、付加価値生産性=利益の向上という大目的に照らして、効果の薄い作業を減らして成果にフォーカスする経営風土があったことで、SFAもすんなり活用できたことは幸運なケースだったとも言えます。

Salesforce.com と Marketo とのデータ連携にも対応したETL:データ連携ツール

「Waha! Transfomer」ではデータ連携先のシステムをデータソースと呼んでいますが、Salesforce.comMarketo という、MA・SFA・CRM のメジャープロダクトもその対象に加わっています。

稼働集計やプロジェクト会計については、一般的にERP:Enterprise Resources Planningと括られるデータベースともデータの読み書きに対応しているプロダクトが多くありますので、機会がある時に稼動中のシステムと照らし合わせてみてください。

「最大12兆円/年の経済損失」に懐疑的なITマネージャーに贈ります! API とは 2025年の崖と未来をつなぐ架け橋

「最大12兆円/年の経済損失」に懐疑的なITマネージャーに贈ります!

API とは 2025年の崖と未来をつなぐ架け橋

本トピックは、当サイトの人気コンテンツ「CIO・情報システム部門のミッション考察」および「ERP移行・基幹系システムの再構築を成功させる5つのステップ」と続いた3部作の最終章として、「戦略:strategy」の下位にあるDXという「戦術:tactics」、さらにその下位にある「戦法:methods」という身近なところから、「APIエコノミー」をキーワードとして皆さんに未来への希望をお持ちいただくべく寄稿いたします。

【まとめ】MA・SFA・CRMツールの導入失敗をリカバリーする3ステップ

MAをはじめとして、SFAやCRMの導入・活用に失敗している組織が、本来の導入目的に立ち返ってリカバリーしていく3つのステップをまとめてみます。

【ステップ1】MA・SFA・CRMの運用を「顧客インサイト」の調査活動と位置付ける

本トピックでは“顧客自身が気付いていない潜在ニーズ”を「顧客インサイト」とし、具体例としてベンチャー企業の拡販に向けてSFAを導入した際に、「失注(敗因)分析」から顧客インサイトを導き出したケースを紹介しました。

B2B・法人営業の世界では、営業パーソンのミッションを「お困りごとの調査員」としている企業もあります。
また、B2Cのマーケティングに携わっている方はご存知かもしれませんが、「インサイトリサーチ」というアプローチもあります。

この顧客インサイトについてよく引き合いに出されるのは、「iPhone」が起こしたイノベーション事例ですね。

一般的な定量調査やグループインタビューなどを行っても、「iPhoneのようなものが欲しい」と言ってくれる顧客は皆無でした。

そんな折り、黒いタートルネックとデニムパンツで有名なスティーブ・ジョブズ氏の尻ポケットには、自社製品の iPod と携帯電話の BlackBerry が入っており、「この2つを一緒にすればもっと便利だろうな」と閃いたというのです。(注:逸話、都市伝説)

その結果、キーボードの付いた旧来型のスマートフォンや日本のガラケーが見事に駆逐されていったことは記憶に新しいでしょう。

日本人が誤解してしまった「技術革新」の要素などほとんどない・既存のテクノロジーを組み合わせただけで破壊的なイノベーション(新結合)につながったのですから、顧客インサイトを軽視してよい理由は見当たりません。

また、少なくない日本企業が「顧客中心」を「マーケット・イン」と誤解し、“顧客の声”に依存してガラケーがガラパゴス化したことをあざ笑うかのように、自社のレーゾン・デートルに基づきながら堂々と「プロダクト・アウト」してくれた様は、成熟市場における商品開発の在り方をも示してくれました。

人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ。

必要は発明の母、偶然は発明の父

。。。ということで。。。

皆さんの脳内に「顧客インサイト」をインストールしていただけるよう、何回見ても惚れ惚れするプレゼンテーション動画を掲載しておきます。(2:30あたりから最高潮に向かいます)

iPhone を発表するスティーブ・ジョブス(日本語字幕) - YouTube

【ステップ2】LTVランキングからベストプラクティスを明らかにして販売生産性を高める

MA・SFA・CRMそれぞれの部分最適な指標ではなく、KGIとしてLTV:顧客一人ひとりがもたらしてくれた利益をランキングします。

先のトピック「BIツール」でも掲載したように、アプローチを「プロセス思考」から「ゴール思考」にバージョンアップするわけですね。

LTVランキング上位には「理想的な顧客」が列をなして並んでおり、そんな優良顧客とのコミュニケーション履歴を類型化して、MAであればナーチャリングシナリオ、SFA・CRMであれば営業・問い合わせ対応プロセスを設計してみましょう。

みんなが知りたがるベストプラクティスは社外ではなく組織内に眠っているはずですが、そんな宝の山を長年にわたって放置したまま、私たちはいったい何をしていたのでしょう。(反省)

【ステップ3】LTVの集計・更新を可能にするデータ連携基盤を整備する

顧客インサイトに着目し、LTVを指標化する意義まではそこそこご理解いただけたと思います。

ところが、日本国内でこのような使い方・運用方針がそのまま機能として具現化されているようなMA・SFA・CRMツールを見聞きしたことがありませんので、同じツールを導入していても、運用方針次第で成功・失敗の明暗が分かれるところかと思います。

特に、LTVの集計・更新はMA・SFA・CRMが連動していても完結できないはずなので、まずは自分たちのLTVを売上原価・粗利ベースで定義付けて、元データが存在しているであろう販売管理システムとSFAのデータを連携させるのが得策でしょう。

ただ、肝心な顧客獲得・維持コストは販売管理システムには含まれないでしょうから、「一見すると粗利は大きいが、隠れた営業・サポート工数も大きい顧客」がランキング上位にならないよう、プロジェクト会計や稼働集計といったデータを整備・連携させるところがゴールになります。

その上で、LTV総選挙を月次・年次などの節目で共有し、ネ申セブンを担当する営業・サポートスタッフが表彰されるような機会を設けて、組織の隅々にまで「顧客中心経営」が浸透する未来を描いてみてはいかがでしょうか。

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参考ニュース

2021年度の税制の目玉の一つ「DX投資促進税制」、メリットを得るには何をするべきか? (1/3):EnterpriseZine(エンタープライズジン) 2021/05/10
上田:D要件として「データ連携・共有」「クラウド技術の活用」「DX認定の取得」の3つ、X要件では「全社の意思決定に基づくものであること」「一定以上の生産性向上が見込まれること」の2つを全て満たす必要がありますから、DXに全社的に取り組んでいる企業のみが対象となる税制だと思います。4月時点では計画申請書の内容が公開されておらず、詳細が明らかになるのは5月以降ですが、過去の税制から考えると、比較的いろいろな項目を記載することになるでしょう。申請書作成にあたっての最初のハードルは、D要件の1つであるDX認定取得だと考えています。すでに取得している企業は別として、これからの企業にとってはこの認定取得が必須です。
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執筆者情報:

ユニリタ Waha! Transformerチーム

株式会社ユニリタ ITイノベーション部

PM・SEに限らず多様な経験・知見を持ったメンバーが、「データ活用」という情報システム部門の一丁目一番地でお役に立つべく集められました。

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