大学経営が渇望する研究や教育の質の向上につながる情報提供を実現!|国立大学法人 東京工業大学様
1881(明治14)年に東京職工学校として設立され、理工系大学の役割が拡大している現在は、世界を舞台に科学技術の分野で活躍できる人材の輩出と地球規模の課題を解決する研究成果によって社会に寄与し、長期目標である「世界最高の理工系総合大学」の実現に向かっているのが国立大学法人 東京工業大学(以下、東工大)です。同校では、戦略プラン「SGU創成事業」(SGU:Super Global University)に力を入れるため、大学経営の支援に必要な情報を提供することを目的に、2015年4月に情報活用IR室(Institutional Research)を立ち上げました。情報活用IR室で、各種情報を集めるためのしくみを構築するために選定されたのが、さまざまな形式のデータを必要な形式にノンプログラミングで変換する国産ETLツール「Waha! Transformer」(ワハ・トランスフォーマー)でした。
導入メリット
- データ統合による教育の質の維持・向上の指標化を実現
- ノンプログラミングのため結果の品質担保が可能
- 業務時間の可視化により、大学教員の「研究」と「教育」の両立を促進
教育の質の維持・向上の指標化にはデータ統合が必要に
広報・社会連携本部 情報活用IR室
教授 博士(情報科学)
森 雅生 氏
2004年、国立大学が法人化され、大学の個性を生かすための取り組みが必要になってきました。そして、「大学経営に必要な情報を集めるための仕組みを構築し、学長、副学長、理事などに情報を提供する」という役割が求められるようになり、2015年4月に情報科学を専門とする森雅生氏が教授として東工大に着任し情報活用IR室を立ち上げました。
大学経営に必要な情報といっても、大学が何を目指すのかにより、どのような指標を活用するかは異なります。教育についての指標としては、例えば日本の教育産業が統一した模擬試験によって導き出す偏差値がありますが、あくまでも入学時の難易度を示すものであり、その大学の教育の質に合致したものではありません。TOEICやTOEFLは、地域や科目を特定しているので使いやすいものの、やはり大学教育による成果に直結するわけではありません。
では、具体的にはどのような指標が必要なのでしょうか。東工大の場合は「世界的に貢献するような研究成果をだしていくという観点から、教育を考える」ということになりますが、森氏が着任当時は、まだ教育の質の維持・向上を行うための明確な指標がありませんでした。
そんな中、森氏が注目したのは、大学教員の活動を総合的に指標化するというものでした。
指標例
- 研究成果を図るために発表している論文数(どれだけ活発に研究を行っているのか)
- 論文の被引用数(どれだけ注目されている論文なのか)
- 国際会議で発表した件数
- 国際的な研究協力の件数
しかし、これらのデータは、必ずしも同じDBで管理されているわけではなく、学部や研究室によってはExcelのファイルを活用しているなど、データやファイル形式も多種多様です。こうしたデータを統合するために導入を検討したのがETLツール「Waha! Transformer」だったのです。
プログラミング不要で誰もが同じ結果を導き出せる「Waha! Transformer」
広報・社会連携本部 情報活用IR室
技術職員
加藤 信也 氏
「情報活用IR室を立ち上げた頃、学長や副学長、理事などの上層部は、研究や教育の質の向上につながる情報を渇望していました。その要望の数に比例してたくさんの仕事があるため、当初3名だったスタッフを徐々に増員しても、自転車操業的な状況は変わりませんでした。」と森氏は振り返ります。
東工大の各部署の管理業務で使用しているデータは、例えば研究費の管理をしている部署には研究費だけの情報しかなく、学生数を管理している部署には学生数の情報だけがあり、双方が紐づけられていないため、データの加工・統合が必要になりますが、限られた人数で上層部から要望される情報を提供するには限界がありました。
森氏によれば、多様な情報がさまざまな場所に存在するという状況は、どの大学でも同じ傾向があるとのことです。前任の大学でも大学経営向けのIR業務に携わっていた森氏は、「Waha! Transformer」によりデータをノンプログラミングで統合できることは、その後の分析がスムーズに行えるため、大きなメリットになるという手ごたえをもっていました。
広報・社会連携本部 情報活用IR室
特任准教授 博士(工学)
大石 哲也 氏
「Waha! Transformer」導入前は、Excelなどによりデータを手作業で統合していましたが、データ量が多いとExcelでの処理には時間がかかってしまったり、そもそもExcelで利用できる行数を超えてしまうというケースもありました。
「『テーブルを結合する』『フィルタをかける』といった、我々開発者が想定する機能が『Waha! Transformer』にはすべて揃っていました。『Waha! Transformer』が優れているのは、プログラムを書かずに、GUI上でアイコンを組み合わせていけばいいということ。情報科学を専門としている我々なので、プログラミングをしようとすればできますが、人によってプログラムの組み方は違います。人に依存する体制ではなく、誰がやっても同じ結果が導き出せるということで『Waha! Transformer』を採用したのです。」(森氏)
また、定期的に実行したい分析で、その都度、人手を介す必要がなくなる点も、工数削減につながることから評価したといいます。さらに大石氏は「途中でエラーが起こった場合でも、最初からではなく、エラーが起こった個所からレジュームできる」という点を、「Waha! Transformer」の良さの1つとして挙げます。
当初は手作業による“自転車操業”であったものが、「Waha! Transformer」導入によりルーチン化されたことで、限られた人的リソースの中での役割分担も明確になりました。その結果、手作業に時間を取られることなく、本来求められている、分析や情報発信に時間をかけることができるようになったのです。
大学教員の「研究」と「教育」の両立の支援にも活用
昨年までは経営層向けの情報提供が中心でしたが、今年度から「教育」の分野での情報活用の活性化も取り組んでいます。
大学教育の質の維持・向上には、研究および論文の発表が欠かせませんが、そのためには研究の時間を増やすことが必要です。しかし、実際の大学教員には研究以外にも、
- 講義(年間を通じて週に3~4コマ)
- 講義の準備
- 大学運営
- 学外の社会貢献(自治体、政府等の委員会への参加)
など、さまざまな業務があります。
そこで「Waha! Transformer」をつかって研究以外の時間の使い方を可視化することにより、
- 講義の負担、運営の負担が集中しているところはないか?
- 若手研究者(若い准教授や助教)に負担が集中していないか? (もっとも論文を執筆できる世代(30~40歳)に研究の時間が取れているか?)
といった課題を洗い出し、「各教員の業務時間を可視化し、研究を行う時間を増やすよう工夫を大学が組織として行うべき」と森氏は語っています。
「これまで、大学経営に関わる“上層部”へ向けての情報提供が主でしたが、それだけでは学内に情報活用IR室の存在意義が浸透せず、誤解を招くこともあります。今後は学内に公開できる情報の提供も行っていきたい。」(加藤氏)
今後もさらに「Waha! Transformer」の活用の場を広げ、大学教育の質の維持・向上を推進していく予定とのことです。
国立大学法人 東京工業大学
- 創立:1881年(明治14年)
- 大岡山、すずかけ台、田町の3つのキャンパスに学士課程約5,000人、大学院課程約5,000人の計約10,000人の学生が学ぶ理工系総合大学
- ホームページ:http://www.titech.ac.jp/
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