当初は通関業務にAI-OCRを導入し、なんと98.5%という衝撃的な読み取り精度を実現し、多いときで1つの申告で100行ほどの入力が必要なInvoiceでは、入力業務だけで3分の1ほどの工数削減を実現。その結果、AI-OCRの有効性がグループ内に広がり、多くの相談が寄せられることに。そこで現在は、グループ会社のなかで業務負荷の高い請求書の仕訳処理にもAI-OCRを適用している状況です。「請求書については定型化されているケースが多いものの、書いている情報をそのままデータにするだけでなく、その情報がどの仕訳に該当するのかを判断できる仕組みが求められました。そこで読み取った情報をもとにどの勘定科目に該当するのかを判断し、『Waha! Transformer』にて勘定科目に関する情報を付加して後段の処理を行っています」と原氏。他にも、荷主からFAXで届く出荷指示書や船荷証券の入力処理においてもAI-OCRを活用し、データ抽出後の加工処理などに「Waha! Transformer」が使われています。
通関業務においては、紙に記載されたInvoiceやPacking Listからキーワードによって明細情報を「AIRead」で抽出し、税関の仕組みに登録できる形に「Waha! Transformer」にて加工処理を実施しています。また請求書に関しては、「AIRead」で座標から情報を抽出し、「Waha! Transformer」にて勘定科目に振り分けながら会計システムに投入するための情報作成を行っています。会計システムへの登録前には人手で確認できる環境が用意され、システムがレコメンドした情報を人手にて修正し、その結果をフォードバックして学習させるプロセスです。「請求書では、複数明細行で入力に時間がかかっている帳票に焦点を当てています。キーワードでも座標でも抽出できる柔軟性は『AIRead』が持つ魅力の1つ」と岡本氏は評価します。
今回取り組んだAI-OCRは、現在経営層が掲げる聖域なきデジタル化に向けた取り組みの1つとして位置づけられています。DX推進を強力に進めることで、荷主を含めた顧客に対してデジタルの力で貢献していくことに大きく役立っていると原氏は評価します。「デジタルへシフトしていくことは、お客さまへの貢献だけでなく、現場で働くメンバーに対しても柔軟な働き方が提供できます。働き手の確保が難しい今の状況下でも、われわれと一緒に働きたいと思ってもらえる施策としても役立つはず。デジタルシフトは社内外に向けて大きな意味がある考え方であり、今回の取り組みはその一翼を担っています」。なお、今回のプロジェクトによって、OCRに懐疑的だった現場の認識をがらりと変えることにつながり、今では業務に欠かすことのできないソリューションとして重宝していると現場からも評価の声が寄せられています。
今回取り組んだAI-OCRによる請求書処理については、今では「請求書仕訳支援クラウド」として外販し始めており、すでに複数社での導入作業が進行中です。「仕訳含めた入力作業とともに、入力内容の正しさをチェックする作業の双方が省力化できるサービスです。属人化しやすかった仕訳処理が標準化できるだけでなく、ETLによるマスターとの突合処理などで入力情報の精度を高めることが可能です。また、FAX受け取り後に原本が郵送されることで二重請求などが発生しがちですが、ETLを駆使して見落としや誤入力の防止などに貢献でき、大きな工数削減を期待して採用いただけています」とビジネス面での効果も高いと岡本氏は評価します。
「Waha! Transformer」については、データフローとロジックが視覚的に把握しやすく、実際の開発担当者から“プラモデルを作る感覚に近い”と使い勝手の良さを表現しています。「OCRで誤読したものに対して文字を置き換えるような加工処理も『Waha! Transformer』が実施しています。読み取り精度向上にも役立っていると現場からも好評です」と岡本氏。また、「Waha! Transformer」をAIReadのオプションとしてOEM販売しているアライズイノベーション株式会社 代表取締役社長 CEO 清水 真氏は「ETLはオープンソースなども検討しましたが、日本語で記載されたツールでの使いやすいさとユニリタの充実したサポートを高く評価し、『Waha! Transformer』を選択しています。UI含めて直感的に使いやすいツールで、われわれにとっても手離れがいいのは大きな魅力です」と評価します。
アライズイノベーション
代表取締役社長 CEO
清水 真氏