現在は、プライベートクラウド基盤上に展開した「Waha! Transformer」を介して、AWS上に展開するSAPとオンプレミス上に設置されたAS/400との間のデータ連携の一部に活用しています。「SAPであれAS/400であれ、最終的には必要に応じてExcelにデータを展開したうえで現場に活用してもらっています。ただし、Excel上で加工するとExcelに関する属人的な技術の習得が必要になるため、技術継承に関して課題が再燃する恐れもありました。そこで、エンジニアの多いAS/400や「Waha! Transformer」を用いてデータ加工を行い、最終的なExcelを生成する処理を行っています」と北野氏は説明します。
具体的には、主に二つの処理で「Waha! Transformer」を活用しています。ひとつは、SAP上で月次処理が行われた段階でその情報をSAPから抜き出し、世界各国のAS/400に対してデータを戻す処理に活用する用途です。「AS/400のエンジニアが社内にはたくさんいるため、SAPの情報をAS/400に戻すことで海外拠点では自由にデータ加工してExcelに展開できます。OracleやSAPが採用するSQL Serverが扱えるエンジニアが増えれば、将来的にはAS/400に戻すことなくオープン系の仕組みに切り替えることができるはずです」と北野氏。現状は4地域に対してそれぞれ1時間程度のバッチ処理が行われています。
ふたつめは、SAP内の情報を「Waha! Transformer」を利用して抽出し、必要な形に加工したうえでExcelに展開する用途です。
SAPは経営層に対して今の数字を可視化する用途に向いていますが、現場に必要なデータ分析には十分でないケースもあります。「80近くある海外子会社の情報も踏まえた数字を横串で見たい場合、連結帳票では詳細な情報までは確認できません。そんなニーズに応えるべく、毎日「Waha! Transformer」を利用してSAP内の情報を抽出し、必要な形に加工した上でExcelに展開する処理を行っています」と川口氏は説明します。実際には150万件の処理を三つのジョブで行っており、トータル3時間ほどでデータ作成が可能になっています。なお、PoCにて作成したAS/400とOracleとの同期処理にも引き続き活用している状況です。
今回「Waha! Transformer」を導入したことで、若手メンバーを即戦力化するための武器として役立っていると語ります。「これまでさまざまなツールを試してきましたが、お蔵入りするツールも少なくありませんでした。「Waha! Transformer」はメンバーが継続的に活用しており、情報システムのツールとしてかみ合ってきた印象です」と北野氏は評価します。社内で経験豊富なエンジニアが3カ月かかって作っていたものを、同様の期間内で若手のエンジニアだけで開発できるようになってきていると語ります。
開発を手掛けている川口氏も、その使い勝手の良さを評価しています。「画面上でドラッグ&ドロップすることでジョブがシンプルに作成できるなど使いやすさを実感しています。一部多言語対応での例外処理などの対応は必要ですが、レスポンス的にも1時間ほどで処理できるなど製品としての使い勝手は上々です。一度開発したものに似たジョブであれば、非プログラマーであっても簡単に作成できますし、ほかの地域に適用する際にもジョブのコピーで対応できるなど、仕組み的にも展開しやすい」。SAPの純正ツールに比べてダウンロード上限などの制限もないため、応用しやすいと北野氏は語ります。
サポート面では、問い合わせがあったときのヘルプデスクの対応が迅速で、用意されているナレッジの情報を検索することで解決することも少なくないと川口氏は評価します。「スキルトランスファーに向けた講習でも、細かな質問に丁寧に受け答えいただきましたし、ジョブのサンプルなども非常に分かりやすい。サポート面でも実際のジョブをコピーしてメールで見ていただくなど、困ったときには親身に対応いただいています」。