そんな同社では、デジタルやデータを効果的に活用することで「一人ひとりのユーザーに向き合う事業変革」を実現するDX戦略を掲げており、ユーザーファーストの事業戦略を強力に押し進めています。「お客さまとのタッチポイントが広がるなか、お客さまと直接つながる事業モデルへの変革を加速させています」とデジタル統轄部 エンタープライズシステム部長 上原 敬氏は説明します。なかでも、従来は開発、生産、物流、販売という順序で商品が市場に流通する典型的なメーカーとしてのバリューチェーンから、ユーザーを中心として開発や生産、営業を回していくというユーザー中心のバリューチェーンへの事業変革に注力しています。
同社が進めるDX戦略においては、ユーザーと直接つながることで豊かな体験を提供する「機会を創出する体験づくり」を進めています。そして、その一環として新たに企画されたのが、液晶や文字板、ベゼル、バンドなどの各パーツの色を選び、自分好みの「G-SHOCK」が作成できる「MY G-SHOCK」です。「ユーザーコミュニケーション中心の新しい体験を提供するブランドに『G-SHOCK』を進化させていくというブランド戦略を掲げるなか、『G-SHOCK』のカスタマイズサービスとして『MY G-SHOCK』が企画されました」と上原氏は当時を振り返ります。
ただし、「MY G-SHOCK」は、ECサイトにてユーザーが好みの色をカスタマイズし、オーダーに基づいて組み立てていく受注生産方式に近いモデルで、従来のような見込生産方式とは大きく異なってきます。「見込生産方式を支える仕組みは長年取り組んできましたが、全く新しい方式にシステムをどう対応させていくのかが大きな課題となりました。起点となるECサイトでオーダーしてもらうためには何の情報が必要で、オーダーをどのようにバックエンドに流していくのかという環境整備が必要になったのです」と上原氏は語ります。